力士のベンチプレス最高記録は?平均重量と怪力伝説・やらない理由の真相
土俵の上で数百キロの巨体が激突する大相撲。鍛え抜かれたあんこ型や筋肉質の肉体を目にしたとき、「お相撲さんはベンチプレスで何キロ持ち上げるのか?」という疑問を抱く人は少なくありません。150キロを超える体重を誇る力士たちなら、200キロ以上のバーベルを軽々と押し上げるのではないかという期待と好奇心は、格闘技・筋トレファンの間でも常に議論の的となってきました。
報道各社の取材データや相撲部屋関係者、専属ストレングストレーナーの証言を検証すると、大相撲の世界には200kg超を挙上する怪力力士が存在する一方で、「ベンチプレスをあえてやらない」という明確な身体論・力学的な方針を持つ力士も多数存在します。大相撲界におけるベンチプレス最高記録、平均的な筋力データ、そして筋トレにまつわる誤解と真相を徹底解剖します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:力士のベンチプレス最高記録は尊富士らの220kgが実証値。元大関・栃東も現役時代に200kgを挙上するなど怪物級の怪力記録が存在する。
- 要点2:幕内力士の平均推定値は140〜160kg前後。専門的な挙上トレーニングを行っていなくても、圧倒的な自重と筋肉量により初挑戦で120kg以上を挙げる例も珍しくない。
- 要点3:多くの力士がベンチプレスを控える決定的な理由は「大胸筋肥大による肩関節の可動域制限」と「腕を突っ張る連動性の阻害」。四股やすり足による体幹主導の出力が最重要視されている。
【驚異の怪力】力士のベンチプレス最高記録と200kg超えの猛者たち
大相撲の歴史の中で、ウエイトトレーニングを積極的に取り入れ、公式または信頼できる証言として残るベンチプレスの最高クラスの記録は200kg〜220kgに達します。
新入幕優勝という110年ぶりの偉業を成し遂げた尊富士は、日本大学相撲部時代からウエイトトレーニングに打ち込み、ベンチプレスMAX220kgという驚異的な数値を記録しています。隆々とした両肩と分厚い大胸筋はまさにその賜物ですが、尊富士自身はウエイトのやり過ぎで肩を痛めた苦い経験を持ちます。その後、師匠や横綱から「四股やすり足を徹底しろ」という助言を受け、ウエイトで培った筋力と伝統の身体操作を融合させたことが、あの電光石火の立ち合いと馬力を生み出しました。
平成の名大関として知られる栃東(現・玉ノ井親方)も、現役時代にベンチプレス200kgを軽々と持ち上げた怪力エピソードで有名です。栃東のおっつけや強烈なハズ押しは、200kgのプレス力を土台とした上半身の剛腕から繰り出されていました。
安治川部屋で急速な出世を果たす安青錦の指導に当たる専属トレーナーの証言によると、「相撲界には220キロ前後を普通に扱えるフィジカルエリートが実在する」と明かされています。しかし、そうした怪力自慢であっても、相撲の現場では単なる挙上重量だけを追い求めることはありません。

お相撲さんのベンチプレス平均重量と筋力測定データの実態
ベンチプレスのトレーニングを日常的に行っていない力士を含めた場合、大相撲力士の平均的な挙上重量はどれくらいになるのでしょうか。日本相撲協会の過去の体力測定データや、実業団・大学相撲出身者の証言を総合すると、以下のような実態が浮かび上がります。
筋トレ未経験の新弟子であっても、体重が120kg〜150kgある入門初期の段階で100kg〜120kgを初見で挙げてしまうケースは珍しくありません。体重比で言えば自重未満ですが、日常のぶつかり稽古や押し相撲で培われた基礎筋力があるためです。関取クラス(十両・幕内)の平均値としては、ウエイトに特化していない力士も含めて140kg〜160kg前後が現実的なアベレージと算出されます。
| 項目・測定指標 | 力士(幕内・関取クラス) | 一般成人男性 / 他アスリート | 運動力学・専門的評価 |
|---|---|---|---|
| ベンチプレス重量 | 平均 140kg〜160kg (最高 200kg〜220kg) | 一般男性:約45kg〜55kg ラグビー選手:130kg〜160kg | 自重と胸郭の厚みによりバーの可動域が狭く有利だが、肩の怪我予防のため高重量を避ける傾向 |
| スクワット重量 | 推定 220kg〜280kg以上 (股割り・四股主体の強靭な下半身) | 一般男性:約60kg〜70kg パワーリフター:200kg〜300kg | 150kg超の自重を支えて深く腰を割るため、下半身の絶対筋力と柔軟性は全スポーツ屈指 |
| デッドリフト記録 | 推定 230kg〜300kg前後 | 一般男性:約70kg〜80kg | 相手を土俵際から吊り上げる背筋力・臀筋群の連動は桁外れ |
| 握力(左右平均) | 70kg〜90kg超 (歴代怪力力士は100kg超も) | 一般男性:約45kg〜48kg | まわしを引く指先のピンチ力・前腕屈筋群が極限まで強化されている |
| 体脂肪率 / 筋肉量 | 体脂肪率:25%〜35% (除脂肪筋肉量:90kg〜110kg) | 一般男性:15%〜20% 筋肉量:約45kg〜55kg | 「脂肪太り」に見えて内部はボディビルダーを凌駕する超高密度な筋骨格構造 |
文部科学省所管の研究機関やスポーツバイオメカニクスの測定調査によれば、幕内力士の除脂肪体重(脂肪を除いた骨や筋肉の総量)は100kg前後に達します。これは一般的な成人男性の総体重の約1.5倍に相当する筋肉量であり、仮にベンチプレスのフォーム練習をほとんど積んでいなくても、短期間の適応で150kgを持ち上げるポテンシャルを秘めています。
なぜ力士はベンチプレスをやらない?現場が警戒する決定的な理由
これほどのフィジカルを持ちながら、なぜ相撲部屋の多くではベンチプレスを必須種目にしないのか。中には「力士にバーベルベンチプレスは百害あって一利なし」とまで言い切る親方衆やベテラントレーナーが存在します。そこには相撲特有の運動連動性と関節機構に基づく明確な理由があります。
1. 大胸筋の肥大が引き起こす「肩関節の内旋」と可動域の制限
ベンチプレスで大胸筋を過度に発達させると、肩甲骨が外転し、肩関節が前内側に入り込む「巻き肩(内旋)」になりやすくなります。相撲で最も重要な技術である「おっつけ」や「まわしを引く動き」、そして「脇を締めて突っ張る」動作において、大胸筋が邪魔をして脇が開きやすくなる致命的な弊害が生じます。脇が空いた力士は相手に容易に下手や上手を許し、土俵上での勝率を著しく落とすことになります。
2. 相撲の「突っ張り」とベンチプレスの「胸押し」の力学的違い
ベンチプレスは「肩甲骨を寄せて固定し、胸の力でバーベルを押し上げる」運動です。一方、相撲の突き押しは「足の親指から発した地面反力を、骨盤・体幹・広背筋・前鋸筋へと連動させ、肩甲骨を前方に滑らせながら手のひらへ伝える」全身連動の直線運動です。胸を張って肩甲骨を固めるベンチプレスの癖がつくと、土俵上で体幹のしなりを使った重い突っ張りが打てなくなります。
3. 150kg超の体重による肩・肘関節への致命的な過負荷
力士はすでに上半身だけで膨大な重量を持っています。その状態で無理に200kg近いバーベルを扱うと、肩の腱板や肘関節に極度の負担がかかります。土俵での激しい稽古で関節をすり減らしている力士にとって、バーベルによる関節のオーバーワークは選手生命に直結するリスクを伴います。
【実態検証】力士の筋トレメニューと現代大相撲のトレーニング革命
近年の大相撲界では、従来の「四股・鉄砲・すり足・ぶつかり稽古」のみを絶対視する精神論から脱却し、最新のスポーツ科学を取り入れたハイブリッドな肉体改造が進んでいます。
安治川親方(元関脇・安美錦)が率いる安治川部屋などでは、力士の身体を熟知した専門トレーナーを招聘し、単なる重量挙げではない機能的筋力トレーニング(ファンクショナルトレーニング)を導入しています。
現代の相撲指導で重視されているのは、大胸筋よりも「股関節の回旋筋群」「前鋸筋」「広背筋」「ハムストリングス」です。バーベルを胸で押す代わりに、以下の種目が好んで採用されています。
- インクライン・ダンベルプレス:肩関節の自由度を確保し、脇を締めた角度で突き出す感覚を養う。
- ケトルベルやメディシンボールスロー:体幹の回旋と地面反力の連動を強化する。
- ヘックスバー・デッドリフト:腰への負担を減らしつつ、立ち合いの瞬発的な股関節伸展パワーを高める。
- 懸垂(チンニング)やローイング:まわしを引きつける背中側の引く筋力を徹底強化する。
現場の力士からは、「ただベンチプレスで胸を大きくしても土俵では体が重く感じるだけだったが、背中と股関節を連動させるウエイトに変えてから立ち合いの出足が劇的に変わった」という声が多く聞かれます。
大相撲の怪力伝説エピソードの真相|千代の富士から現代まで
相撲界の筋トレといえば、真っ先に名前が挙がるのが「ウルフ」の愛称で一世を風靡した第58代横綱・千代の富士です。
千代の富士「脱臼克服」のウエイト神話と真実
千代の富士は若い頃、肩関節の脱臼癖に苦しんでいました。それを克服するために選んだのが、徹底的な上半身の筋力強化でした。一日500回〜1000回に及ぶ腕立て伏せと、相撲部屋の片隅に設置したバーベルによるトレーニングで、肩の周囲を筋肉の鎧で固めました。千代の富士がベンチプレスを何キロ挙げたかという公式記録は残っていませんが、当時の体脂肪率は10%前後、体重120kg台でありながら、200kg近くを押し上げるパワーとスピードを兼ね備えていたと語り継がれています。
「300kgを持ち上げる力士がいる」というネット上の噂は本当か?
インターネット上やSNSでは「怪力力士ならノーギアでベンチプレス300kgを挙げる」という言説が散見されますが、これは明らかな誇張です。パワーリフティングの世界記録(ノーギア)でも140kg超級で300kg台前半〜半ばであり、これらはベンチプレスに人生のすべてを捧げた超一流リフターが専用の技術を極めて達成する領域です。土俵での機動力を最優先する力士が、専門的な挙上技術なしに300kgを挙げることは力学的にあり得ません。しかし、「未調整のまま200kg〜220kgを挙げる」という事実だけでも、世界中のアスリートの中で突出した怪力であることは揺るぎません。

【プロの結論】相撲の身体論から学ぶ「使える筋肉」と「見せる筋肉」の境界線
大相撲の肉体作りを運動生理学の視点から分析すると、現代の筋トレ愛好家や他競技のアスリートにとっても極めて示唆に富む教訓が得られます。
相撲の身体づくりから学ぶべき人・おすすめできる人
- 体幹主導の強いパワーを発揮したい格闘技・コンタクトスポーツ選手:胸筋単体の出力ではなく、四股やすり足のように「足裏から全身を通して力を伝える」連動性を最重視するトレーニングを取り入れるべきです。
- 怪我を防ぎながら生涯動ける肉体を作りたい人:可動域を犠牲にしてまでベンチプレスの重量を追うのではなく、肩甲骨と股関節の柔軟性を確保しながら筋力を高めるアプローチが適しています。
ベンチプレス特化型トレーニングを見直すべき人
- 肩関節の痛みや巻き肩に悩んでいるトレーニー:ベンチプレス偏重のメニューは大胸筋と小胸筋の過度な短縮を招きます。背筋群(ベントオーバーローやラットプルダウン)との比率を2:1程度に見直し、前鋸筋を活性化させる種目を導入することが推奨されます。
【力士 ベンチ プレス】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:力士はウエイトトレーニングを全くしなくてもベンチプレス100kgを挙げられますか?
A1:多くの関取や幕下上位力士であれば、フォームを教わるだけで100kg〜120kg程度を持ち上げることが可能です。140kgを超える自重と、毎日のぶつかり稽古・腕立て伏せによって基礎的な上半身の押し込み筋力が極めて高いためです。
Q2:尊富士のベンチプレス220kgは相撲界で歴代1位ですか?
A2:公式な大会記録ではないものの、現代の報道や関係者の証言で裏付けられた数値としては事実上の歴代トップクラスです。過去の学生相撲出身力士や栃東らも200kg超を記録していますが、220kgはパワーリフティングの重量級トップ選手に匹敵する極めて稀有な数字です。
Q3:力士の体脂肪率はなぜ高く見えるのに筋肉量が桁外れなのですか?
A3:力士の肉体は、相手の激しい突きや投げの衝撃を吸収するための「厚い皮下脂肪」の下に、ボディビルダー並みの「強大な遅筋・速筋線維」がぎっしりと詰まった構造になっています。CTスキャン等を用いた研究でも、力士の筋肉断面肥大率は他競技のアスリートを大きく上回ることが証明されています。
Q4:現在の相撲部屋には本格的なトレーニングジム機器があるのですか?
A4:部屋によって方針が分かれます。伝統的な稽古場のみを維持する部屋がある一方、安治川部屋や鳴戸部屋などの新設部屋では、最新のフリーウエイト器具、パワーラック、ファンクショナル器具を完備したトレーニングルームを併設し、科学的アプローチを積極的に導入しています。
まとめ:力士の強さはベンチプレスの数字を超えた「連動性」にあり
大相撲力士のベンチプレスは、最高で200kg〜220kg、平均しても140kg〜160kgという凄まじい怪力を誇ります。しかし、土俵という極限の勝負の世界で力士たちが何よりも追求しているのは、ベンチプレスの挙上重量という「部分的な出力」ではなく、足裏から指先まで一瞬で力を伝える「全身の連動性と柔軟性」です。
尊富士のような新世代の力士たちが証明したように、伝統の四股やすり足と科学的なフィジカルトレーニングが高次元で融合したとき、相撲の怪力は真の強さへと昇華します。ベンチプレスの数字の奥にある、数百年の歴史に裏打ちされた大相撲の深遠な身体論にこそ、私たちが学ぶべき真の肉体づくりの極意が存在します。 (出典: 力士 ベンチ プレス(Yahoo!ニュース))